「12回転職した」のキャッチフレーズで有名な山崎元さんの本「一生、同じ会社で働きますか?」を手に取ってみた。山崎さんは転職=悪の方程式が必ずしも正しくないことを日本で広めたエヴァンジェリスト的な存在の方。
やはり、
- 12回の転職経験で酸いも甘いも分かっており、冷静に転職とは?が語られていること
(例えばこんな記述)
・転職未経験者に向けて、転職について一番大切なアドバイスを一言にまとめると、「転職の基本は猿の枝渡りだ」 ということだ
・転職は、時には「必要」なのであって、冒頭の問いは、転職が「好きか」・「嫌いか」だけで答えられる問いではない
・転職する際には「テーマを持て」ということだ。 次の転職が「時間」・「お金」・「自由」のどれを目指したものかを明確に意識しよう
・転職しないサラリーマン人生であってもいいが、転職を当たり前の選択肢だと考えておく方が「適した仕事」に就いて充実した人生を送ることができる可能性が高い
- そうそう・・・と思わせてくれるような転職機微をとらえた記述やテクニックが多くあること
(例えばこんな記述)
・転職とは「主な取引先の変更」なのだ
・転職者への半ば嫌がらせで、「転職が癖になると、どんどん条件の悪い所へ落ちていってしまうから気をつけた方がいい」と言う人(多くは転職したことがない先輩社員)がいるが、癖になるくらい(!)転職すると、何が得で何が損かというくらいのことはわかるようになるので、最初にしがみついた会社を離れることを怖がる必要はない
・入りたい会社、やりたい仕事があれば、その仕事の責任者に、自分から会いに行ってみることは無駄ではない
・最近のテクノロジーを利用した方法として、筆者のおすすめは、スキャナーの利用だ。名刺も仕事の書類も、日頃から取り敢えず全てスキャンしてデータとして持っておき、元本は退職の際は会社に置いて行くのがスマートだ
- 転職を考えている人が持つべき”心持ち”のようなものが丁寧に解説されていること
(例えばこんな記述)
・もちろん、人間関係に対する感じ方・考え方は、人によって違う。仕事上の人間関係にあっての自分の癖、自分のタイプといったことを自覚しておくと、今後を考える上で役に立つことが多い
・転職先として検討中の候補先と現在の職場を平等に比較する視点を持つことが重要だ
・転職では、自分自身と共にビジネスプランを「相手の利益の立場から」説明し、売り込む のだという心構えを持っておくと、希望が叶う確率が大きくなるだろう。転職活動とは、自分という商品を売り込む「商談」のことなのだ
・転職は悪いことではないのだから決して卑屈にならずに会社と対等だという感覚で行動し、同時に相手の立場に対してもビジネスパーソンとして必要な配慮を払うのだ
・職業人生がより長期化する時代への適応を考えるなら、 45 歳くらいからセカンド・キャリア(主に定年後の働き方だが、必ずしも定年を待つ必要は無い)について考え始めることが適切だろう。これに伴う転職も同意義の転職だ
- 仕事ができる人になるためのヒントが多く提供されていること
・「自分にとっての真の顧客は誰かを正確に捉えよ」 ということだ。「真の顧客」とは、自分の仕事を買うことを決めてくれる「実質的な購買の決定者」のことだ
・できる仕事はこれだと言えるような形で、自分のキャリアと知識・スキルを積み重ねておかねばならない。もちろん時間がかかるし、ある程度の計画性と戦略性が必要だ。自分の商品価値を確立できずに 35 歳を越えても、その不利を克服することが可能な場合はあるが、その場合には、人並み以上の努力と工夫が必要になるということだ
・多忙なビジネスパーソンの実力判別法を一つお教えしよう。それは、2週間以上先の夜の予定(パーティーでも、映画でも、お酒でもよい)を約束しようとした時に、①約束ができるか、また②約束を正確に実行できるかを見る、という簡単なものだ
・「いいか、ヤマザキ、 仕事の意見は大きな声で言え。 意見を言わない奴は、居ないのと同じだ。どうせ言うなら大きな声で言え。 そこで肝心なことがある。誰にでも同じことを言う、ということだ。相手によって言うことを変えてはいけない。 これは難しいと思うかもしれないが、絶対に正しいから覚えておけ
などなどから、読んで良かった、というのが感想。
この本を読んで思い出したのは、私が新卒で入った会社の話。当時流行りのネットベンチャーで、リクルートの営業出身のやり手副社長から「お前らどこに行っても食っていけるように鍛えてやる」と自身満々に言われていたこと。
私自身は恥ずかしながら、この年にになってまだどこに行っても食えるという境地には達せていないのではあるが・・・ビジネスマンとして目指すべき一つの境地ではあるだろうと思う。
山崎さんはまさしくどこへ行っても食える人なのだが、どうしてそれが可能だったのか?この本はそんな視点でも読むことができそう。
巷で言われるように、山崎さんは非常に能力の高い人であり、安易にまねてはいけないというのはその通りだろう。
ただし、何回か転職経験がある私から見ても、この本には我々のような一般人にも参考になる箇所が多々あることは疑いようのない事実であると思う。
繰り返しにはなってしまうが、この本を読むととかく心理的にきつい転職活動の各場面で変に弱気になったりしなくて済む、というような心理面での効能は大と考えられる。プロサラリーマンとしての処世術は学ぶところが多い。
比較的若い人向けではあるが、上の年代でも参考になることは多そう。何度も読み返したい一冊だった。
一生、同じ会社で働きますか? 目次
転職の哲学
転職のある人生設計
転職の作法
転職者のビジネス心得
転職者の勉強術
参考外部リンク1:転職12回の経験者に聞く 自分を高める仕事の選び方:日本経済新聞
山崎さんコラム。人材価値を高める転職の大切さが語られている。
参考外部リンク2:40代の転職、成功の秘訣とは!? 山崎 元(経済評論家)|Zuu Online
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