「難関資格に合格しただけでは、“人生の一発逆転”を起こすのは難しい」
それが、当コラムの結論です。
これから書く話はすべて私の実体験に基づくものです。難関といわれる国家試験に合格し、その資格だけを武器に未経験業界への転職を目指したけれど、箸にも棒にも掛からなかった話を書いていきます。
ご興味をお持ちいただいた方は、このまま読み進めていただければ幸いです。
中小企業診断士に合格!すぐに人生が一変すると思っていた
私が合格した資格は、中小企業診断士です。
“経営コンサルタントの国家資格”で、中小企業の経営状況を診断し、成長戦略や経営改善の助言をするのが役割です。
2016年には、日本経済新聞の「ビジネスパートナーが取得したい資格ランキング」で1位に輝きました。
最近では、野村総研と英国のオックスフォード大学の共同研究で、AIによる代替率が0.2%と極めて低いという調査結果が出たことでも話題になりました。
そのような影響もあって注目度は年々増しており、社会的な認知度も高まりつつあります。
合格率は4%前後で、合格までの総勉強時間は1000時間以上といわれる難関資格だけに、「資格があれば、転職は簡単にできる」と考える方もいることでしょう。
私もよく似た野望を抱いていました。
しかし、その野望はあえなく砕かれることになります。
中小企業診断士に挑戦する前の私
本題に移る前に、まずは簡単な経歴を紹介します。
私は大卒後、新卒でなんとなく入社した卸売企業を半年で辞めて、マスコミ業界に身を投じました。
その後、スポーツ紙の記者やスポーツ誌の編集者として、10年以上スポーツマスコミに携わりました。その間に、数々の有名アスリートにインタビューしてきました。
しかし、「スポーツだけでなく、ビジネス界隈にも足を踏み入れてみたい」「日本社会を動かしている名物経営者にインタビューしてみたい」という願望が次第に強くなり、一念発起。
経営全般の知識が学べる中小企業診断士の挑戦を決意しました。
つまり、最初の目的は、仕事の幅を広げることだったのです。
合格後、コンサルファームへの転職を狙うも、ことごとく落選
ところが、勉強に多くの時間を費やし、知識量も次第に増えてくると、「コンサルタントもやってみたい」という想いが、じわりじわりと芽生えてきました。
合格までの苦労話は当コラムでは割愛させていただくとして、なんとか中小企業診断士を取得できた私は、「せっかく取得したのだから」とコンサルファーム業界への転職を志すようになりました。
もちろん、コンサルタントとしての経験なんてありません。
それでも、“経営コンサルタントの国家資格”を持っているわけだから、どこかには引っかかってくれるだろうと淡い期待を抱き、コンサルファームに片っ端から応募しました。
さらに並行して、コンサル系に強い転職エージェントにも支援してもらいました。
ところが、お祈りメール、お祈りメール、お祈りメール……。
エージェントからも「20代ならまだしも、未経験で30代後半はかなり狭き門。50社に1社あれば御の字」とまで言われる始末でした。
結局、私のコンサルファームへの転職活動は、一度も書類選考を通過しないまま、終了しました。
難関資格に合格したからといって、人生の一発逆転は起こらない。
それを痛感する転職活動でした。
転職に成功する40代中小企業診断士もいる
私は希望どおりの結末にはなりませんでしたが、人によってはコンサルタント未経験の40代の方でも、中小企業診断士の合格を機に、コンサルファームへの転職を成功させた人もいるようです。
そして、その方々の特徴は、はっきりしています。しっかりとしたバックボーンがあることです。
営業部長として数十人のマネジメントをした経験がある。
財務担当として多額の資金調達に成功した。
工場長として運営管理を任されていた。
そうした実績があるかないかが、私との大きな差でした。
つまり、資格だけでは転職を成功させる決定的な一打にはならないということです。
そして今、私は…
私は今、中小企業診断士として独立開業しています。
経営コンサルタントとしての仕事依頼が来る気配はありませんが、マスコミ業界の経験を生かして、中小企業の魅力を発信するお手伝いをしたり、中小企業の経営者が役立つ情報を提供したりなど、資格と過去の実績を生かせる仕事を頂いております。
そして、経営者にインタビューすることも多々あります。中小企業診断士の挑戦を決めた当初の目的はしっかりと達成できたわけです。
今回の件で、中小企業診断士という資格は、それまでの経験やスキルと掛け合わせることで、価値を発揮するものだと学びました。
中小企業診断士の資格だけでは、人生の一発逆転は起こりません。これだけは、口酸っぱく言い続けます。
中小企業診断士の資格を転職活動の武器にしようとお考えの方は、まずはご自身の過去の経験や培ってきたスキルの棚卸をすることをおすすめします。
そして、中小企業診断士という資格と相乗効果が生まれると判断できれば、ぜひ挑戦なさるべきだと思います。
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